英単語のスペルと発音の不一致③
こんにちは講師のたかえもんです。英語の発音とスペルが一致していないのは、「大母音推移(だいぼいんすいい the Great Vowel Shift)」と「活版印刷技術の発明」が原因とお伝えしました。
英語は、今から600年前から300年前にかけて母音の発音が変化してしまう「大母音推移(だいぼいんすいい the Great Vowel Shift)」が起こりました。
こうした発音の変化は世界中で起こることなのですが、英語は不幸にもこうした発音の変化に「活版印刷技術の発明」が重なってしまいます。このことが発音とスペルの不一致の元凶となります。
「活版印刷」とは、現代につながる印刷技術のことです。1文字ずつ文字を彫った金属のハンコ(活字)を作り、それを組み合わせて文章にしたものを印刷するというものです。
この発明がされるまで、ヨーロッパでは本は大変貴重で、一部の上流階級しか手にすることのできないものでした。
というのも、1冊の本を作るのに非常に多くの時間と手間がかかるからです。
ところが活版印刷技術が発明されることで、短い時間で安く大量に本を作ることができるようになります。
この結果、一部の上流階級に独占されていた情報が幅広く広まることになり、一種の情報革命が起こります。ルターの宗教改革も、聖書が大量に印刷されるようになったことが原因の1つです。
一部の人々に独占されていた情報が広く広まることで、ヨーロッパの学問レベルは大幅な深化を遂げ、世界をリードする原動力の1つになります。
こうした輝かしい発展に貢献した活版印刷技術の発明ですが、英語の発音とスペルの関係に限っては不幸を引き起こします。
「大母音推移」で発音が変化し始めた時期に活版印刷技術の発明が重なることで、単語のスペルが大母音推移前のスペルで固定されてしまったのです。
日本語で考えてみましょう。
たとえば、大阪という地名は「あふさか」という発音でしたが、次第に「あうさか」→「おおさか」と発音が変化しています。日本語の場合、発音の変化をうけてひらがなの表記を変えました。ところが「あふさか」の表記で止めてしまい読みは「おおさか」と無理矢理読ませる、ということが英語では起きてしまったのです。
大昔の歴史的仮名遣いを今現在も使い続けているのが英語だと言えます。
活版印刷技術の発明があと少し遅かったら、あるいは大母音推移がもう少し前に終わっていれば、英語のスペルと発音の不一致はない可能性が高いです。
残念なことに現実は「大母音推移」と「活版印刷技術の発明」が重なることで、世界でもにもまれなぐらい発音とスペルが一致しない現象が起きてしまいました。
今からでも改められると良いのですが、あまりにも世界中に現行のスペルが広まってしまったため、修正するのにどれくらいの費用や時間がかかるか分かりません。
そんな費用や時間を使うくらいなら、これから英語を学ぶ人に苦労を押しつける方が安上がりで楽なので、英語の発音とスペルが一致していない問題は放置されています。
まったく迷惑な話です。こんな不合理な部分が英語にはあるため、「英語は世界共通語としてふさわしくない」と言う人もいます。
しかし、言語にはこういった不合理さはつきものです。こればっかりは諦めて受け入れるしかありません。
自分も発音とスペルが一致していない問題にはかなり苦しめられました。「oneってなんでワンと発音するの?どう読んでもオネでしょ」とまあ苦戦しました。
だからスペルと発音が一致していないことで苦労しているひとがいたら、安心してください。みんな大変な思いをしてきました。これは英語の欠陥なのです。
表音文字の役割を半分ほど放棄しているのはやっぱりおかしいと思います。英語を学び始めるにあたって、ハードルが高すぎます。もう少しなんとかして欲しいですが、難しいです。