テスト効果③

こんにちは講師のたかえもんです。

前回まで、テストを行うこと自体に効果があるという「テスト効果(testing effect)」とそれを確かめる実験を紹介してきました。

テスト効果はその有効性が確かめられていますが、次のような批判があります。

「テストは何かを覚えるということには効果的なのかもしれない。しかし、それはただの丸暗記でしかない。覚えた内容を深く理解しているとは思えない」

こうした批判への返答となる実験が存在します。

2011年にアメリカのパデュー大学で、ジェフリー・カーピキ教授がパデュー大学の学生に次のような実験を行いました。

まず、「人体の血液」や「筋肉組織」など、科学的な専門知識が多く現れる科学論文を5分間読んでもらいます。そのあと、学生たちをグループ①とグループ②の2つのグループに分けます。

グループ①のメンバーには科学論文を5分間読んだ後、20分間その内容をコンセプト・マップにまとめてもらいます。コンセプト・マップとは読んだ内容を図で分かりやすく整理したものです。

コンセプト・マップを作成するときは論文は見てOKです。

これに対して、グループ②のメンバーは科学論文を5分間読んだ後、論文を見ないで7分間読んだ内容を思い出せるだけ思い出して書いてもらいます。そして、その後にもう1度論文を5分間読んでもらいます。最後に、再び論文を見ないで7分間その論文の内容を書き出してもらいます。

図でまとめると↓のようになります。

グループ①

5分間

20分間

論文を読む

論文を見ながらコンセプト・マップを作成する

グループ②

5分間

7分間

5分間

7分間

論文を読む

論文を見ずに、その内容を書き出す

論文を読む

論文を見ずに、その内容を書き出す

グループ②の網掛けされている箇所がテストの要素です。

この2つのグループに対して、1週間後に論文の内容に関するテストを行いました。

その結果は以下の通りです。

グループ① 正答率54%

グループ② 正答率73%

これまでテスト効果を見てきた実験と同じで、テストの要素があったグループ②の方が正答率が高いという結果になりました。この実験で注目すべきなのは、グループ②の方が論文を読む時間の合計が少ないにもかかわらず、グループ①よりもテストの正答率が高かったということです。

グループ②が論文を読んだ合計時間は10分(最初の5分+後の5分)でした。それに対して、グループ①が論文を読んだ合計時間は25分(最初の5分+コンセプト・マップを作成する20分)です。

この事実から導き出せる結論は、「文章を理解するには、文章を読んだ時間の長さよりも、読んだ文章を記憶しているかテストする方が重要である」というのものです。

読んだ文章の内容をまとめることは、内容の理解を深めるのに効果があります。しかし、それ以上に暗記できているかテストする方が効果的なのです。

ですが、ここまでの話は冒頭の批判に答えるものではありません。冒頭の批判とは「テストは何かを覚えるということには効果的なのかもしれない。しかし、それはただの丸暗記でしかない。覚えた内容を深く理解しているとは思えない」というものでした。

この批判に対する返答については、次回お伝えします。