テスト効果②

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は、テストを行うこと自体に効果があるという「テスト効果(testing effect)」と、それを確かめるための実験を紹介しました。

今回は前回紹介した実験とは別の、「テスト効果」を確かめる実験を紹介します。

ワシントン大学のジョー・バークラフト教授が、2007年にアメリカの大学生を相手にスペイン語の単語習得についての実験を行いました。

まず被験者である大学生に、スペイン語の単語とその意味を表すイラストを3秒間提示します。

例えば、スペイン語に「serrote」という単語があります。この単語は「のこぎり」を意味します。被験者に「serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を3秒間見せます。

その後、グループ①には12秒間、「serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を表示し、さらにその後にまた12秒間同じ「serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を表示します。

これに対してグループ②はグループ①と同じく、最初に「serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を3秒間見ます。ですが、その後がグループ①と異なります。

serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を3秒間見た後、6秒間「のこぎりのイラストだけが写った画像」を見せられ、さらにその後6秒間「serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を見せられます。

そして、もう1回「のこぎりのイラスト」だけを6秒間、「serroteというアルファベットとのこぎりのイラストがセットになった画像」を6秒間見ます。

図示すると↓のようになります。

グループ①

3秒間

12秒間

12秒間

serrote」と「のこぎりのイラスト」がセットになった画像

serrote」と「のこぎりのイラスト」がセットになった画像

serrote」と「のこぎりのイラスト」がセットになった画像

グループ②

3秒間

6秒間

6秒間

6秒間

6秒間

serrote」と「のこぎりのイラスト」がセットになった画像

「のこぎりのイラスト」

だけの画像

serrote」と「のこぎりのイラスト」がセットになった画像

「のこぎりのイラスト」

だけの画像

serrote」と「のこぎりのイラスト」がセットになった画像

グループ①は単語とその意味がセットになった画像が表示され続けるだけなので、テストの要素はありません。

それに対してグループ②は画像に対応する意味を思い出すことが求められるので、テストの要素があります。↑の表で灰色になっているところが意味を思い出すことが求められている箇所です。

これら2つのグループにそれぞれの仕方で画像を見せた後、その直後・2日後・1週間後にテストを行いました。

結果は、どのテストもグループ②の方がグループ①よりも正答率が高いというものでした。

この実験から分かることは、テスト的な要素がある方が記憶への定着が良いということです。

グループ①とグループ②はどちらも単語を覚えることに同じ時間を費やしています。

ですが、グループ②の大学生が実行したような、たった6秒でも思い出すという要素があるだけで、記憶の定着に大きな違いが生まれます。

このことから、記憶には思い出すという作業が重要だということが分かります。

覚えようとするだけよりも、覚えたかどうかをチェックする作業を挟んだ方が効果的です。

覚えたかどうかをチェックする作業として、テストをしてみるのが1番手っ取り早いです。

つまり、テストを行うことは学習に効果があるのです。