テスト効果④

こんにちは講師のたかえもんです。

前回はテスト効果について、ジェフリー・カーピキ教授がパデュー大学の学生に行った実験についてお伝えしました。

グループ①

5分間

20分間

論文を読む

論文を見ながらコンセプト・マップを作成する

グループ②

5分間

7分間

5分間

7分間

論文を読む

論文を見ずに、その内容を書き出す

論文を読む

論文を見ずに、その内容を書き出す

↑がその実験で、実験の1週間後に実施したテストではグループ②(正答率73%)の方がグループ①(正答率54%)よりも正答率が高いという結果が出ました。

この実験結果からもテスト効果を確かめられましたが、テスト効果に対して次のような批判が存在します。

それは、「テストは何かを覚えるということには効果的なのかもしれない。しかし、それはただの丸暗記でしかない。覚えた内容を深く理解しているとは思えない」という批判です。

これに対して、ジェフリー・カーピキ教授の実験は1つの応答になると言えます。

というのも、ジェフリー・カーピキ教授の実験で行われたテストでは、読んだ文章の表面的な理解度を測る問題と、より深い内容の理解度を測定する問題の2種類が出題され、両方の問題ともグループ②の方が正答率が高かったからです。

出題された2種類の問題について詳しく見ていきましょう。

読んだ文章の表面的な理解度を測る問題とは、字義的問題(verbatim qustions)と言われるものです。これは、読んだ文章の内容がそのまま問われるというタイプの問題です。

例えば、「人体の血液」についての論文であれば、「ヘモグロビンと酸素が結合すると、どうなりますか?」といった問題が字義的問題として出題されました。

それに対して、より深い内容の理解度を測定する問題とは、推論問題(inference questions)と言われるものです。これは、読んだ文章には書かれていないことを読んだ文章を手がかりに推論する問題です。

例えば、「人体の血液」についての論文であれば、「もし人体にフィブリンが無かったとしたら、傷口からの血液の流れはどうなると考えられますか?」といった問題が推論問題として出題されました。

推論問題は字義的問題よりも読んだ文章に対するより深い理解が求められます。字義的問題が基本問題であるとすれば、推論問題は応用問題に当たると言えます。

ジェフリー・カーピキ教授の実験では、字義的問題と推論問題の両方でグループ①よりもグループ②の方が正答率が高いという結果が得られました。

このことは「テストは何かを覚えるということには効果的なのかもしれない。しかし、それはただの丸暗記でしかない。覚えた内容を深く理解しているとは思えない」というテスト効果に対する批判が、的外れであることを示します。

テストを行うことは内容の丸暗記だけでなく、内容の理解を深めることにも効果があるのです。

さて、これまで「テスト効果(testing effect)」についての実験を3つお伝えしてきました。

これらの実験はある前提を共有しています。それは「事前に学習を行う」というものです。

では、事前に学習を行わずにテストをしたらどうなるのか。このことを確かめた実験が存在します。

そんなテストをしても意味が無いと思われるかもしれません。

ですが、実際に実験をしてみると驚くべき結果が得られました。

次回は、事前学習なしのテストが学習に効果的かどうかについてお伝えします。