世界的な少子化の流れ⑥

こんにちは講師のたかえもんです。

「都市化」の進展により、少子化は世界的な問題になっています。

この問題の解決策として考えられるのが、出産や養育の支援を充実させることです。

「都市化」にともなう少子化は、お金の問題が大きいです。

農村部では子供は資産ですが、都市部では負債です。

そのため、出産や子育ての支援を手厚くすることで少子化は解消できるのではないかとなるのは自然な流れです。

しかし、世界中で行われているこうした支援は根本的な解決策にはなっていません。

たとえば、スウェーデンの事例があります。

スウェーデンの出生率は1900年には4.0でした。ところがその35年後の1935年には、出生率は1.7にまで激減しました。

これに危機を感じたスウェーデン政府は出産や育児の支援を充実させる対策を取りました。

妊娠している女性の医療費を無料にしたり、家族手当の導入、妊娠や出産を理由とした解雇の禁止といった先進的な対策を次々と実行したのです。

こうした支援は成功し、スウェーデンの出生率は2.5まで増加しました。

出生率は2.1という数字が現在の人口を維持できる数字です。スウェーデンで回復した2.5という出生率は純粋な人口増加を意味します。

スウェーデンの支援政策は大成功であるように思われましたが、1970年代からまた出生率は下がり始めます。

この事態にスウェーデン政府はさらなる支援の充実で対抗しました。

保育サービス時間の延長、男性の育児や家事への参加を推奨、1年間の育児休暇では収入の9割を政府が保障。こういった対策をスウェーデン政府は1989年に行いました。

この対策もまた効果を発揮し、出生率は2.1にまで回復します。

しかし、1990年代になるとスウェーデンは経済不況に突入します。

不況のあおりを受け、出産や養育の支援は縮小されます。この結果、1990年代末までにスウェーデンの出生率は1.5まで下がりました。

その後、景気が回復したスウェーデンは再び出産や養育の支援を再開します。

育児休暇を480日間に延長し、その期間の収入を8割保障することにしました。

また、家族手当に加え、子供が1人増えるごとにさらに手当を加算する仕組みを作ります。子供が増えるたびに手当が増えるようになったのです。

これ以外にも、子供が病気になって親が家に残る場合の有給付与など、以前よりも手厚い支援が実施されました。

今度もこうした支援は効果を上げ、1.5だった出生率は1.9まで回復します。

ですがそこまでがピークで、2020年の出生率は1.66と少しずつ低下し続けています。

こうしたスウェーデンの事例から、「出産や養育の支援は出生率の低下を緩やかなものにするけれど、出生率低下の根本的な解決にはならない」ということが明らかになります。

出生率が2.1を下回ると人口は減少するしかないからです。