世界的な少子化の流れ⑤

こんにちは講師のたかえもんです。

日本に限らず世界的に少子化が進行しています。その最大の原因は「都市化」にあります。そして、「都市化」にともなって起きる「女性の地位向上」も少子化の原因の1つと言われています。

女性がさまざまな束縛から解放され、望む人生を歩めるようになり始めました。

男性と同じく、女性にも社会的なキャリアを追求することが許されるようになります。

女性にも自分の人生を決定する権利が認められると、妊娠や出産はその障害になります。

妊娠や出産は女性の身体に大きな負担をかけるだけでなく、自由な時間も奪います。

世界で2番目に男女の平等が実現しているとされるフィンランドは、出産や育児の支援も手厚い国として知られていますが、出生率は低下の傾向にあります。

出生率低下の原因の1つには、フィンランドの若者たちの間で子育てに対する価値観が変化していることがあると言われています。

フィンランドでは1997年から「理想的な子供の数」を尋ねる調査が行われています。

「理想的な子供」を0人、つまり子供は1人も要らないと答える人の割合は、長らく1.5%前後で安定していました。

ところが、2015年から子供は1人も要らないという人は増えだし、20代の若者にいたっては24%も子供を望まないと回答するようになります。

これは個人の自由や権利を尊重する考えが広まったためと考えられています。

子供の存在よりも仕事や自己実現を重視する人がフィンランドで増えています。

子供の養育には多くの時間と費用がかかります。その時間や費用を他のことに回したいと思うのは、ある意味で自然な流れです。

そして、男性よりも女性の方が出産や養育の負担が大きいのです。

妊娠してから出産まで平均して10ヶ月ちかくかかります。その間、食事や行動に制限がかけられます。

イスラエルの社会学者であるオルナ・ドーナトは、2016年に子供を産んで後悔している女性たちにインタビューした研究書、『母親になったことを後悔している』を出版しました。

この本が出版されると、世界中で大きな反響がおこりました。

「子供は良い子たちだし、愛している。でも、人生をやり直せるなら2度と母親にはなりたくない」

こういった発言がこの本に収録されています。

子供は可愛いし、大切に思っている。それはそれとして、「母親」という役割は負担が大きすぎるというのが「母親になったことを後悔している」女性の本音のようです。

日本でも2019年に413人の母親に対して「子供を産んだことを後悔しているか」というアンケートが行われました。その結果、40.4%が「後悔したことがある」という回答をよせました。

自らが望んだ生き方をするにあたって、妊娠や出産、養育というのは間違いなく負担です。

女性の生き方にも多様性を認め、自由に生きることを肯定する社会では子供を持たない自由も当然認められなくてはいけません。

それを認めず、出産を強制するのは人権の侵害に他なりません。

女性の自由を認める以上、出生率の低下は受け入れるしかありません。

女性に出産を強制する以外に少子化へのどんな対策があるかというと、「移民の受け入れ」と「出産や養育支援の充実」が世界的に取られている対策です。

「移民の受け入れ」と「出産や養育支援の充実」がどの程度少子化対策として効果があるのか、次回以降見ていきます。