「飢餓作戦」と「正義と秩序を基調とする国際平和」

こんにちは講師のたかえもんです。

さて、今年は第二次世界大戦が終結して80年です。そのことに関連して、今回は太平洋戦争末期に実施された「飢餓作戦」と、現代にも通ずる課題についてお伝えしようと思います。

「飢餓作戦」とは、連合軍(主にアメリカ軍)が日本に対して行った機雷を大量にまく作戦です。

機雷というのは、簡単に言うと地雷の水中版です。水中に爆弾を設置し、船がその近くを通るとドカンと爆発します。これが機雷です。

その機雷を瀬戸内海や日本と朝鮮半島の間に大量にまいたのが、「飢餓作戦」です。日本の船が通る所に大量の爆弾をまいて、船を使えなくさせたのです。

この時期、太平洋戦争についてよくメディアで取り上げられます。東京大空襲や沖縄戦、広島・長崎への原爆投下など、悲惨な出来事について聞いたことのある人は多いのではないでしょうか?

ところが、日本の海上交通路を破壊した「飢餓作戦」については取り上げられることがあまりありません。知名度がかなり低いですが、この作戦によって多くの死者が出るところでした。どれだけたいへんなことだったのか、私たちは知る必要があります。

80年前の日本も現在の日本も、船での物資の輸送が大切です。いえ、大切なんて言葉では足りないくらい大切です。

例えば、2022年のデータでは、日本の貿易量の99.6%が船の輸送に頼っています。航空機の貿易量は0.4%しかありません。ほぼ100%、日本は船による輸送に頼っています。

では日本が特殊なのかというと、そうではありません。

2017年のデータでは、世界の貿易量の86.6%が船に頼っています。航空機の割合は0.2%しかありません。世界のほとんどの国は、船での輸送に頼っています。

どうしてこんなにも船での輸送に頼るのでしょうか?航空機の方が、早くて便利そうなのに。

たしかに航空機の方が、船よりも何倍も早く目的地に到着します。しかし、船よりも燃費がものすごく悪いのです。

航空機が7回飛んで輸送できる量を、船だと1回で輸送できます。船は航空機の7倍も燃費が良いのです。燃費が良いということはエコです。急いで運ばないといけない場合は航空機を使うべきですが、そうでないなら船を使う方がメリットが多いのです。

船による輸送はまさに日本の生命線です。

さて、船による輸送が大事とは言っても、実感がわかないかと思います。そこで実際に身の回りのものがどれだけ船の輸送に依存しているかを見てみましょう。

綿花・羊毛(セーター等)

100%

原油

99.7%

衣類

99%

天然ガス

98%

大豆(みそ、醤油など)

94%

小麦(パン、うどん等)

85%

砂糖類

66%

木材

64%

魚介類

46%

ほんとうに多くのものが船で運ばれていますね。

80年前の太平洋戦争末期に行われた「飢餓作戦」によって、当時の日本はほとんど船を使えなくなりました。船が移動するためのルートが機雷によって封鎖されたためです。船による輸送ができなくなることが、どれだけ深刻なことかもう想像がつくと思います。

1945年9月2日に日本は公式に降伏しました。この時点で多くの死者が出ていましたが、もし降伏するのがもっと遅かったなら、数千万人が餓死していただろうと考えられています。太平洋戦争の日本の死者はおよそ300万人なので、その何倍もの人がさらに死んでしまうところだったのです。

さて、この過去の出来事から何を学ぶことができるでしょうか?それは、日本がどれだけ船の輸送に頼っているかということ、そしてそれを断つ方法が実際に存在しているということです。

「飢餓作戦」が日本に対して発動されたのは、日本が太平洋戦争を起こしたからです。

海上輸送路の破壊という破局を繰り返さないためには、国際平和と国際協調が大切です。

近代的な生活を送るためには、日本は船による輸送に頼らないといけません。それが上手くいっているのは国際平和が保たれ、国際協調が実現できているからです。

今の生活を維持したかったら、日本国憲法9条に書かれているように、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求 」する必要があります。そのことこそが、今の豊かな生活を送る上での大前提です。

グローバル化が進み、日本は世界情勢の影響を受けやすくなっています。平穏な暮らしを送り続けるためにも、「正義と秩序を基調とする国際平和」がなくてはならないのです。