「少子化はどうしたら解決できますか?」②

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は、少子化の原因は「①都市化」と「②(都市化に伴う)女性の地位向上」にあり、「農村部では子供は親にとって経済的にプラスの存在であるが都市部では子供は親にとって経済的にマイナスな存在である」というお話をしました。

「都市部では子供は親にとって経済的にマイナスな存在である」ということを、『2050年 世界人口大減少』では「都市部では子供は負債である」と表現しています。これはどういうことなのでしょうか?

農村部では、子供は安価な労働力として利用できます。しかし、都市部ではそうなりません。養う対象が一人増えるだけです。養育に費用や時間を取られ、その分の経済的なリターンはほぼありません。少なくとも、目に見える形での即座の経済的利益はありません。純粋に経済的な視点だけで判断すると、都市部において子供は経済的にマイナスな存在なのです。このことを端的に表現したのが、「負債」という表現です。

都市部と農村部の合計特殊出生率を比較すると、明らかに違いがあります。都市部の合計特殊出生率は低く、農村部の合計特殊出生率は高いという傾向が見られます。たとえば、世界で人口が最も多いインドの合計特殊出生率は、農村部が2.2なのに対し、都市部1.8という数字です(2022年のデータ)

こうした傾向は世界中どこの国でも同じです。また、歴史的にもいつの時代も同じです。「都市部では合計特殊出生率が低下する。」あるいは「都市部では少子化が進む」というのは1つの法則であると言っても言い過ぎではありません。

ですが、ではどうして都市部は消滅しないのでしょうか?少子化が進むのであれば、都市の人口は減少するはずです。人口が自然と減少するなら、都市はいつの日にか消滅するはずです。どうして都市部は出生率が低下する傾向があるのに、存続しているのでしょうか?

その答えは、農村部からの人口流入です。

古くから都市部は農村部の人口を吸い上げることで存続してきました。出生率の低さを外部からの輸血という形で補ってきたのです。たとえば、江戸時代には旧里帰農令や人返し令といった法令を出して、農村部から流出してきた人口を押し返そうとしました(そして、いずれも失敗しています)

しかし、ではどうして農村部から都市部に人口は流れていくのでしょうか?それは自由だからです。都市の方が農村部よりも自由な活動ができるからです。

自由というのはとても魅力的です。農村部では先祖代々の土地を守り、死ぬまで同じ仕事に従事しないといけません。人生に選択の余地はありません。けれども、都市部では農村部よりも(比較的ですが)自由度は高いです。一攫千金の夢を見ることもできます。

人の行き来が農村部よりも多い都市部では、農村部と違い、多様な価値観が生まれます。また、図書館や学校といった教育施設が農村部よりも早くに生まれます。変化に乏しく、画一的な価値観が固定されがちな農村部に住む人間にとって、都市とは夢のように感じられる場所です。

こうした理由で、都市は農村部から人口を吸い上げ、その存在を維持します。

しかしながら、持続性に問題があります。何度も繰り返しますが、都市部では子供は経済的に負担となるため、出生率は下がります。その都市部が世界的に増えています。都市は人口を吸い込むブラックホールのようなものです。それが増えているということは、人口を供給してくれる農村部が減少し、世界的に少子化が進むことを意味します。結果として、世界人口は自然と減少していくこととなります。事実、今年7月に国連から2080年代から世界人口は減少に転じると推計が発表されました。人類の人口は自然に減少する可能性が高いです。