アフガニスタン「攻撃」とイラク「戦争」の違い⑥

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は、国際連合憲章で認められた3つの軍事力の行使(「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」「②個別国家による自衛権の行使」「③旧敵国に対する措置」)のうち、「③旧敵国に対する措置」について説明しました。

国際連合憲章では、第二次世界大戦の敗戦国である 日本・ドイツ・イタリア・ブルガリア・ハンガリー・ルーマニア・フィンランドが「敵国」と定義されています。これらの「敵国」が再び侵略行為を実行しようとした場合、北大西洋条約機構(NATO)やヨーロッパ連合(EU)などの地域組織は、国際連合の安全保障理事会の許可がなくても強制措置を取ることが許されます。

北大西洋条約機構(NATO)やヨーロッパ連合(EU)などの地域組織は、国際連合の安全保障理事会の許可がなければ強制措置を取ることは許されていません。しかし、日本・ドイツ・イタリア・ブルガリア・ハンガリー・ルーマニア・フィンランドといった「敵国」に関しては許可がなくても良いと規定されています。「敵国」と規定された国への武力制裁発動のハードルは低いのです。

このことが、国際連合憲章で認められた3つの軍事力の行使のうちの「③旧敵国に対する措置」です。ですが、現在この内容は死文化していて無効となっている見方が一般的です。

というのも、「敵国」についての規定は、第二次世界大戦の敗戦国が国際連合に加盟するまでの一時的な措置に過ぎないからです。国際連合憲章21項では「この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。 The Organization is based on the principle of the sovereign equality of all its Members.」とあります。「この機構」とは国際連合を指し、国際連合に所属する国はすべて平等であるという原則を示します。国際連合に加盟した「旧敵国」を「敵国」として扱うのは、この国際連合憲章21項に違反します。なので、国際連合に加盟した国は「敵国」としての扱いを解除される、というのが現在の一般的な理解です。

国際連合は、宣戦布告を伴う「国際法上の戦争」と宣戦布告を伴わない「事実上の戦争」の両方を禁止しています。ですが、「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」「②個別国家による自衛権の行使」「③旧敵国に対する措置」の3つの事例だけは例外としています。

「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」は、「戦争や事実上の戦争を禁止する」というルールを破った国への武力行使は安全保障理事会で許可が下りた場合には許される、というものです。

「②個別国家による自衛権の行使」は、「戦争や事実上の戦争を禁止する」というルールを破った国に対する武力行使は安全保障理事会による決議が行われるまで防衛のためなら許される、というものです。

「③旧敵国に対する措置」は、北大西洋条約機構(NATO)やヨーロッパ連合(EU)などの地域組織は第二次世界大戦の敗戦国が再び侵略を行おうとした場合に安全保障理事会の許可が下りなくても武力行使することが許される、というものでした。これに関しては、死文化されているというのが現在の定説です。

以上の3つが、国際社会で許されている武力行使です。とは言え、「③旧敵国に対する措置」は死文化しているので、国際社会で許されている武力行使は実際には2つです。いずれにせよ、現在の国際社会では自分から武力行使をすることは許されていません。

国際連合が成立して以降の国際社会では、武力行使が許されるのは相手から攻められた場合だけです。ではどうしてアメリカによるアフガニスタン攻撃やイラク攻撃がおきたのでしょうか?次回はその話をします。