アフガニスタン「攻撃」とイラク「戦争」の違い④

こんにちは講師の高野です。

前回まで、国際連合憲章で認められた3つの軍事力の行使(「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」「②個別国家による自衛権の行使」「③旧敵国に対する措置」)のうち、「②個別国家による自衛権の行使」について説明しました。

「②個別国家による自衛権の行使」とは、武力攻撃を受けた国は防衛のために軍事力を使うことが許されるというものです。この権利のことを自衛権と言います。

今回は、国際連合憲章で認められた3つの軍事力の行使(「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」「②個別国家による自衛権の行使」「③旧敵国に対する措置」)のうち、「③旧敵国に対する措置」についてお伝えする予定でしたが、中学3年生の9月の定期テストの範囲に「集団的自衛権」が含まれているので、自衛権の1種である「集団的自衛権」について詳しく説明することにします。

自衛権とは、武力攻撃を受けた際に自国を守るために軍事力を行使することが許される権利でした。自衛権は次の2種類があります。

・「個別的自衛権Individual self-defence

・「集団的自衛権Collective self-defence

「個別的自衛権」とは、自国に対する攻撃に対して反撃する権利です。たとえば、A国がB国を攻撃した際に、攻撃を受けたB国がA国に対して反撃するような事態です。

これに対して「集団的自衛権」とは、自国が攻撃されたわけではないけれども他国に反撃する権利です。たとえば、A国がB国を攻撃した際に、B国と同盟を結んでいるC国やD国がA国に対して反撃するような事態です。

「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の2つが、国際連合憲章51条や慣習国際法で自衛権として認められています。国際連合憲章51条で「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を認めている以上、国際連合に加盟している国はすべて「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の所有が認められています。日本も国際連合に加盟している国なので、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を所有することが国際的に認められています。

ですが日本は長い期間、「集団的自衛権」を所有するけれども行使はしないという立場を表明していました。これを専門的には集団的自衛権違憲論と呼びます(この言葉はテストに出ないので覚えなくて大丈夫です)

少し話がややこしいので、整理します。日本を含め国際連合に加盟している国はすべて、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の両方を所有しています。日本も国際連合に加盟している国なので、当然「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の両方を所有しています。しかし、日本は「個別的自衛権」の方は行使するけど「集団的自衛権」の方は行使しないという立場をとってきました。

ところが2015年に制定された平和安全法制(この法律はテストに出るので覚えましょう!)では、「集団的自衛権」の行使も(限定的に)認めるということになりました。長い間日本がとってきた立場を大きく変えたのです。

こうした経緯があるので、平和安全法制の制定の際にけっこう揉めました。ともかく、これまで日本が表明してきた姿勢を大きく変えたので、平和安全法制はテスト的にも重要です。

「集団的自衛権」をめぐる議論は様々な歴史的経緯や政治的信条、利害が絡み合った厄介な話題です。それゆえに深入りしない説明が多いです。もしこの議論に立ち入りたいと思うなら、何かしらの立場に絡めとられることを覚悟しないといけません。政治的な議論において完全な中立はありえません。どんなに偏りがないような考えであっても、必ず思想的な偏りがあります。そのことを意識しないで政治的な話をすると、大火傷を負いかねません。とてもデリケートな話題なのです。

次回は 国際連合憲章で認められた軍事力の行使の、「③旧敵国に対する措置」についてお伝えします。