アフガニスタン「攻撃」とイラク「戦争」の違い③

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は国際連合憲章で認められた軍事力の行使である、「国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」についてお伝えしました。

国際連合憲章で認められた軍事力の行使は、「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」「②個別国家による自衛権の行使」「③旧敵国に対する措置」の3つです。今回は「②個別国家による自衛権の行使」について説明します。

自衛権についての規定は国際連合憲章51条に書かれています。

国際連合憲章51条

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective selfdefense if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security. Measures taken by Members in the exercise of this right of self-defense shall be immediately reported to the Security Council and shall not in any way affect the authority and responsibility of the Security Council under the present Charter to take at any time such action as it deems necessary in order to maintain or restore international peace and security.

国際連合憲章2条4項で「戦争」や「事実上の戦争」は禁止されていますが、それを破る国は存在します。そうした侵略国家に対して、国際連合が必要な措置を取るまで抵抗することが認められています。これが自衛権の行使です。

国と国との問題を解決するために武力を行使することは禁じられています。ですが侵略してきた国に対する武力抵抗まで禁止してしまったら、たいへんなことになります。侵略する側が一方的に得をすることになるからです。

そんな無法は認められないので、国際連合が侵略国に必要な措置を取るまで武力による抵抗が認められています。

この抵抗は無制限なものではありません。仮に無制限な抵抗を認めてしまうと、侵略を受けた側が侵略をした側に何をしても良いとなってしまいます。復讐がエスカレートしてしまう恐れがあります。侵略に対する反撃は認められますが、何をやっても良いというわけではありません。

また、武力を伴った抵抗は「国際連合が侵略国に必要な措置を取るまで」という期限が決められています。緊急的に応戦することは構わないですが、いつまでも恨みを引きずって侵略国に対して武力行使をすることは認められていません。

さらに、こうした抵抗は国際連合に報告する義務があります。これは国際連合の安全保障理事会が適切な対応を行うのに必要だからです。

話をまとめますと、「戦争」や「事実上の戦争」は国際連合憲章2条4項で禁止されていますが、そのルールを破った国に対する自衛のための武力行使は許されています。しかし武力抵抗の規模や期間などは無制限ではなく、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの一時的なものと規定されています。

次回は国際連合憲章で認められている軍事力の行使である、「③旧敵国に対する措置」についてお伝えします。