アフガニスタン「攻撃」とイラク「戦争」の違い②

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は、国際連合では国際法上の「戦争」と「事実上の戦争」の両方が禁止されているというお話をしました。今回は、例外的に許されている軍事力の行使についてお伝えします。

国際連合憲章2条4項で「戦争」や「事実上の戦争」は禁止されています。ですが国際連合憲章で認められた軍事力の行使があります。それは以下の3つです。

①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置

②個別国家による自衛権の行使

③旧敵国に対する措置

まず「①国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」について説明します。

国際連合憲章2条4項で「戦争」や「事実上の戦争」は禁止されていますが、それでもその禁止を破って「戦争」や「事実上の戦争」を実行してしまう国は存在します。そうした国に対して、対抗措置を何も取らないでいることは良くない結果につながります。ルールを破っても何もペナルティがないというのであれば、どれだけの国が「戦争」や「事実上の戦争」は禁止するというルールを守ろうとするのでしょうか?ルールを守らないで軍事力を行使する国が増えるであろうことは簡単に予測されます。

この問題に対処する組織として、国際連合には安全保障理事会という組織が存在します。

安全保障理事会は国際連合憲章2条4項に反しているかどうかの認定や、違反に対する制裁を決議する組織です。制裁には様々なレベルのものが存在しますが、最も重い制裁は国連軍を組織しての軍事的措置です。これは簡単に言うと、国際連合憲章2条4項に違反した国に対して、国際連合に加盟している国から軍隊を集めて力づくで戦争行為を止めさせるというものです。

このように「戦争」や「事実上の戦争」に関するルールについて話し合うのが安全保障理事会です。そして安全保障理事会による武力行使は合法と認められています。

ちなみに、安全保障理事会は常任理事国5か国と非常任理事国10か国、合計15か国から構成されています。この15か国の内、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票で決議は可決されます。重大な事案に対する決議なため、過半数での可決ではありません。

常任理事国はアメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシアの5か国で、任期の制限はありません。ずっと常任理事国のままでいられます。

非常任理事国は任期2年です。日本は過去12回非常任理事国になったことがあり、これは国際連合に加盟している国の中で最も多い数です。

安全保障理事会の決議は、常任理事国5か国+非常任理事国4か国の賛成で可決されます。常任理事国5か国すべてが賛成していないといけないのがポイントです。常任理事国が1か国でも決議に反対すると可決されません。この仕組みのことを一般的には拒否権と呼びます。

常任理事国は世界でも軍事力の大きい国々です。これらの国の意見が一致していないと国際社会の安定に悪影響があると考えられたため、このような制度が取り入れられました。

ですがこの制度は実際には悪用されることが多いです。自分の国に不利になるような決議には賛成しないことで、自国に不利な状況を作らせないようにするのです。

これまでに行使された拒否権の割合は、ロシア(ソ連時代も含む)49%、アメリカ29%、イギリス10%、フランス6%、中国6%となっています。

国際連合憲章2条4項を破った国に対して国連軍を組織して武力行使をすることが認められていますが、国連軍が組織されたことはこれまで1度もありません。国連軍が組織されるような事態になると、必ず常任理事国のいずれかの国が拒否権を使うからです。

そういった現実から、安全保障理事会は機能不全に陥っていると批判されることがよくあります。事実、2022年から行われているロシアによるウクライナ侵攻は国際連合憲章2条4項に違反する行為であり、本来ならば安全保障理事会での厳しい制裁に値するものです。ですが、ロシアは安全保障理事会で拒否権を行使して、安全保障理事会の働きを阻止しています。これは安全保障理事会という組織の大きな問題です。

このような大きな問題を抱えていますが、「国際連合の安全保障理事会決議に基づく措置」であれば軍事力の行使は合法と規定されています。

次回は国際連合憲章で認められている軍事力の行使である、「②個別国家による自衛権の行使」についてお伝えします。