テスト効果⑤

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は、学習内容に対する深い理解にもテストは効果があるというお話をしました。今回は、事前に学習をしなくてもテストそのものに学習効果があるという実験をお伝えします。

ロンドン大学のデボラ・ポッツ博士とデヴィッド・シャンクス博士が、英語を母国語としている人々を対象にコンピューターを使った次のような実験を行いました。

まず、バスク語をまったく知らない英語を母国語としている人々を集めます。バスク語とは、スペインとフランスにまたがるバスク地方の言語です。

その後、この人々を3つのグループに分け、それぞれ違うことをしてもらいます。

グループA

①まったく知らないバスク語の単語がコンピューターに表示され、10秒以内にその意味を推測してコンピューターに入力する。

②7秒間、その単語とその意味がコンピューターに表示される。

例えば、バスク語にはカエルを意味するigelという単語があります。グループ①の人々は、「igel」という単語だけがコンピューター上に表示され、10秒以内にその意味を入力しないといけません。

バスク語をまったく知らない人を集めたのですから、当てずっぽうで答えてもらうことになります。ほとんどのひとは正解できません。そして、当てずっぽうで出した答えをコンピューターに入力したあと、答えが7秒間コンピューターに表示されます。

グループB

①まったく知らないバスク語の単語がコンピューターに表示され、10秒以内にその意味をコンピューターに表示された4つの選択肢から選ぶ

②7秒間、その単語とその意味がコンピューターに表示される。

グループBグループAとほぼ同じことをしてもらいます。異なるのは、単語の意味を4つの選択肢から選ぶところだけです。

グループC

①17秒間、まったく知らないバスク語の単語とその意味が表示され続ける。

グループC は、グループAやグループBと違って単語の意味を考えません。その代わりに、ずっと単語とその意味を覚え続けてもらいます。

この実験を図で示すと以下のようになります。

グループA

10秒間

7秒間

単語の意味を推理して入力

単語とその意味が表示される

グループB

10秒間

7秒間

単語の意味を4つの選択肢から選ぶ

単語とその意味が表示される

グループC

17秒間

単語とその意味が表示される

これら3つのグループに、それぞれの学習のあとバスク語の意味を問うテストを受けてもらいました。このテストは選択式です。

結果は、最も正答率が良いのはグループAで、最も正答率が悪いのはグループCというものでした。つまり、事前に学習をしないグループが最も成績が良かったのです。