ゴールデンウィーク 小田原城総構え一周②

こんにちは講師のたかえもんです。

小田原城の総構え跡を1周する試みは、開始早々道に迷って終了しかけました。ですが、親切なご婦人のおかげでどうにか最初の遺構にたどり着けました。

小田原城の総構えは城下町をぐるっと囲ったものです。戦時には役に立ちますが平和な時代には邪魔なだけなので、遺構はほとんどが壊され埋められています。

ほとんど総構えの跡は残っていないのですが、谷津から緑四丁目を通り十字四丁目にかけては比較的当時の姿を残しています。とは言っても、草の生い茂った土塁や堀の跡が見えるだけです。

しかも、そうたいそうなものが見られる訳ではありません。土の盛り上がっているところが土塁の跡、逆に掘り下がっているところが堀の跡というだけです。

それらが何㎞にも渡って一望できれば印象も違ってくるのでしょうが、実際には点々と見えるだけで整備された遺構を期待すると肩透かしを食らいます。

谷津から十字四丁目にかけては総構えの遺構が最も残っている場所ですが、想像たくましく往事を思い描かないと面白いものではありません。

遠くに見える現在の小田原城からの距離を見て、当時の防衛機構がどんなだったかを妄想するという楽しみ方ができないとただの散歩です。

十字四丁目は、テレビでも取り上げられることの多い御鐘ノ台(おかねのだい)の大堀切(おおほりきり)があります。

御鐘ノ台の大堀切は高さ12メートル、幅20メートルの空堀の跡です。ここはかなり整備されていて、最も見応えのある場所です。

「東日本は土の城が多く、西日本は石垣の城が多い」とはお城関係でよく言われる言葉です。

現在の小田原城には石垣がありますが、これは江戸時代になってから作られたものです。総構えのあった戦国時代の小田原城には石垣はほとんど存在しませんでした。

どうして「東日本は土の城」と言われているかというと、関東ローム層という地質が大きく関係しています。

関東ローム層とは関東地方に特徴的な土壌を指します。関東地方には富士山や浅間山が噴火したときの噴出物が多く降り注ぎました。この噴出物がたまってできたのが関東ローム層で、粘土質で滑りやすいという性質を持っています。

この粘土質という特徴が重要で、わざわざ石垣を作らなくても土を盛り固めるだけで十分崩れにくい土台ができます。そのため、戦国時代の関東の城は石垣なんて面倒なものを作らない城ばかりでした。

さらに滑りやすいという性質も重要です。地面を掘り下げて作っただけの空堀でも、つるつる滑って上に戻れないものになります。しかも、土でできているため破損の修復も簡単です。破損した部分に土を足せば良いだけです。

地面を掘って土を盛り上げるだけで優秀な堀と土塁が出来上がり、そのうえ修理も簡単とあっては言うことなしです。こうした事情から関東地方の城では石垣はほとんど作られず、「土の城」が主流でした。

話を御鐘ノ台の大堀切に戻すと、この空堀の底は散歩できるようになっています。傾斜60°の堀の底を何十メートルと歩けます。こんな感じの堀と土塁が9キロに渡って小田原城を囲っていたのなら、難攻不落をうたわれたのも納得です。

十字四丁目にある御鐘ノ台の大堀切を抜けると、あとは見るべきものはほとんどありません。住宅街に入り、遺構がほとんど残されていないからです。

土塁は少し盛り上がっただけしか痕跡は残っていませんし、堀の跡は道や暗渠(あんきょ)になっていました。

暗渠とは蓋のしてある水路のことです。新玉小学校のあたりには大きな水堀がありました。それに蓋をして現在は通れるようにしてあります。

御鐘ノ台の大堀切を出て、板橋見附、南町や浜町を通り、新玉小学校や留置支所の近くを抜けて丹羽病院へと戻り総構え1周を終えました。

ほぼ住宅街を道沿いに歩くだけでしたが、道を間違えたりして全部で3時間半ほどかかりました。

小田原市が発行している「はじめての総構」というパンフレットを見ながら歩くと、段差が土塁と堀の跡だと分かったりして痕跡が意外と残っていることに気づかされます。

とは言え、見栄え良く残っていないので地味です。かなりのお城好き向けで、あまりおすすめはしません。

小田原市は観光に力を入れていて、小田原城などを推しています。それならもうちょっと総構え関連も整備して欲しいと、実際に歩いて感じました。

ただ、1周歩くのに3時間は軽くこえる広さなので、本格的に総構え関連を整備しようとするといくら予算があっても足りないでしょうから難しいのも分かります。

今回、ゴールデンウィークということで思い切って歩いてみましたがかなり疲れました。足がくたくたになりました。

楽しかったかというと微妙なところですが、最大規模の小田原城を体感できたのは良い経験になった気がします。もう少し総構えの全体がはっきり分かるような整備がされると、観光する人も呼び込めそうで惜しいなと感じました。