「第二言語としての英語」と「外国語としての英語」③

こんにちは講師のたかえもんです。

前回は中学高校と英語を勉強しても、高度な英語を身に付けるのには勉強時間が足りていないという話をしました。今回は日本人が英語を学ぶのは「生活言語(BICS=Basic Interpersonal Communicative Skills)」の獲得を目的とするのか、それとも「学習言語(CALP=Cognitive Academic Language Proficiency)」の獲得を目的とするのかというお話をします。

最近は英語教育学の研究が進み、英語の学習について学習者の環境や目的に応じた学び方が論じられるようになりました。

こうした英語教育学の進展により、英語の能力を「生活言語(BICS)」と「学習言語( CALP)」という2種類に分ける考えが出てきています。

「生活言語(BICS)」とはアメリカやカナダのような、英語が身の回りにある環境で生活するために必要な言語能力を指します。文字通り、日常生活を営むのに必要な言語能力です。具体的には、買い物や挨拶、世間話などを円滑にできる能力のことで、スピーキングやリスニングに重心があります。

これに対して「学習言語(CALP)」は学校で扱う教科書や評論文、論文、新聞記事、マニュアルといった高度な内容を理解する言語能力を指します。専門的な内容を学習するために必要な能力を指し、文法の理解やリーディングやライティングに重心があります。

どちらの能力とも身に付けられるに越したことはありませんが、必要に応じて優先順位を考える必要があります。例えば、英語話者の友人を作りたいと思うなら「生活言語(BICS)」の習得に力を入れるべきです。またそうではなく、仕事や学問で英語圏の最新の情報を手に入れたいなら「学習言語(CALP)」の習得に力を入れるべきです。

このように需要や要望に応じて、「生活言語(BICS)」と「学習言語( CALP)」のどちらの獲得に力を入れるべきかは変わってきます。

では、小中高の英語の授業で重視するべきなのは、「生活言語(BICS)」と「学習言語( CALP)」のどちらの習得でしょうか?

前回お伝えしたように小中高の英語の総授業時間数は約1000時間です。これは「生活言語(BICS)」と「学習言語( CALP)」の両方を習得するにはまったく足りていません。限られた授業時間を最大限活用するために、どちらの習得をより重視するのかしっかりと考えないといけません。

もちろん「生活言語(BICS)」と「学習言語( CALP)」の両方を満遍なく習得できるのが理想です。

ですが、授業時間数という制約以外にも、英語を学ぶ環境がどのようなものであるかによって、英語の効果的な習得方法が変わってくるという事情があります。

母国語が英語ではない社会では、英語を学ぶ社会的な環境は

①「第二言語としての英語(ESL=English as a second language)」

②「外国語としての英語(EFL=English as a foreign language)」

の2つに分類されます。日本は①「第二言語としての英語(ESL)」と②「外国語としての英語(EFL)」のどちらの環境なのか、それによって必要とされる言語能力が違ってきます。

次回は①「第二言語としての英語(ESL)」と②「外国語としての英語(EFL)」はどう違うのか、日本はどちらの環境なのかを見ていきます。