世界的な少子化の流れ⑨

こんにちは講師のたかえもんです。

世界的に進む少子化の流れをこれまで見てきました。

少子化の原因は都市化が進むことにあります。都市化の進行により、子供の養育費が上がることが少子化の大きな原因です。

少子化の対策として、出産や養育の支援といった対策が多くの先進国で取られています。しかし、出産や養育の支援は少子化を根本的に解消するものではなく、少子化の進行を一時的に食い止めることしかできません。

現在のところ少子化対策として効果が認められているのは、移民を大量に受け入れることだけです。経済発展して都市化が進んだ国ではこれ以外の解決方法は見つかっていません。

本当は移民の受け入れ以外にも方法はあります。それは女性に対して、子供を多く産むことが一人前の女性の証であると社会的に圧力をかけることです。つまり、女性の自由に生きる権利を圧迫するという方法です。

しかしながら、この方法は道義的に問題があり認められません。全体の利益のために、一部の人間に犠牲や負担を強制するやり方はなるべく避けなくてはいけません。

となると、大量の移民受け入れが少子化問題への唯一の対策となります。

ですが、移民を多く受け入れることは、その国の国民感情を悪化させます。

移民の受け入れで治安が悪化したり、職を奪われるといった心配がささやかれますが、実際には心配されるほどの変化は起こりません。それにもかかわらず、どこの国でも感情的な拒絶反応が起こります。

例えば、2016年にイギリスがヨーロッパ連合(EU)から離脱した事案、いわゆるブレグジットを見てみましょう。

イギリスは2016年に国民投票を行い、賛成52%反対48%でヨーロッパ連合(EU)離脱を決定しました。イギリスがヨーロッパ連合(EU)を離脱した理由のなかで最大の理由は、イギリスへの移住希望者が増えすぎることへの忌避感にありました。

ヨーロッパ連合(EU)からの離脱は、イギリスにとって経済的にはマイナスばかりが多いです。そのため理性的に考えれば、ヨーロッパ連合(EU)からの離脱はありえない選択でした。

ヨーロッパ連合(EU)からの離脱反対派は、ヨーロッパ連合(EU)からの離脱がどれだけイギリスに損であるかを訴えました。しかし、この訴えはヨーロッパ連合(EU)からの離脱賛成派のことを理解していない訴えでした。

ヨーロッパ連合(EU)からの離脱に賛成していた人々は、移民によって自国の文化や伝統が変化してしまうのを1番恐れていました。このことを離脱反対派は理解できていなかったのです。

とても重要なのは、理性の問題ではなく感情の問題だったという点です。移民によって文化や伝統が実際に変わってしまうことよりも、移民によって文化や伝統が変わってしまう「だろう」という根拠にもとづかない漠然とした不安が問題だったのです。

イギリスでヨーロッパ連合(EU)からの離脱にもっとも多くの賛成に投票した地域は、コーンウォールやウェールズ、北部工業地帯など移民があまり来ない地域でした。

逆にロンドンなどの移民が多くいて、移民の実態についてよく知っている地域ではヨーロッパ連合(EU)からの離脱に反対する割合が多かったのです。

移民の大量受け入れは、少子化によって引き起こされる人口減少への唯一の対策です。ですが、感情的な反対が強いため、実施のハードルはとても高いのが現状です。

どれほど合理的な方針であっても、民意を説得できなくては絵に描いた餅にでしかありません。

少子化が進行している国は、おとなしく人口減少を受け入れるか、感情的な反発が多くても移民を受け入れてあがくか、この二択に迫られています。