世界的な少子化の流れ⑦
こんにちは講師のたかえもんです。
世界的な少子化の進行に対して、出産や養育の支援といった対策が世界中で取られています。
しかしながら、その効果は限定的です。
少子化のスピードを緩めることはできても、根本的な解決にはなりません。
前回はスウェーデンの事例を見ましたが、今回はハンガリーの事例を見ます。
ハンガリーは移民の受け入れを拒否し、出産や養育への支援だけで人口減少に対処しようとしている珍しい国です。
ハンガリーの出生率は1991年の段階で1.87でしたが、1999年には1.28まで下がります。
現在の首相である、オルバン・ヴィクトルが首相に就任した2010年の出生率は1.25でした。
オルバン政権そこから国内総生産(GDP)の5%もの費用を投入した、様々な出産や養育の支援を押しすすめます。
代表的な支援制度に「出産ローン」というものがあります。
これは子供を持とうとする夫婦に、最大370万円を無利子で貸し出す制度です。
この貸し出されたお金は、貸し出しから5年以内に子供が1人できると返済が3年間猶予されます。
さらに2人目の子供が生まれると、再び返済が3年間猶予される上に、返済額の3割が帳消しにされます。
そして3人目が生まれると、返済額が全額帳消しになります。
この「出産ローン」制度以外にも、4人以上出産した女性への所得税免除措置や住宅購入支援といった様々な支援制度が導入されています。
これだけ手厚い出産や養育への支援制度を導入したおかげでハンガリーの出生率は回復しました。
しかしながら、回復したと言っても2020年段階で1.56でしかありません。
この数字は人口を維持する水準である出生率2.1には届いていません。
出生率は2.1を上回らないと人口は減る一方です。
多額の出産や養育に対する支援は、出生率低下を緩和するだけで、人口が増える水準まで引き上げられないのです。
とは言え、前回見てきたスウェーデンの事例や今回のハンガリーの事例は「出産や養育の支援なんて無意味だ」ということを意味するわけではありません。
出産や養育の支援は少子化を緩やかなものにする効果が見られます。
少子化の根本的な解決にはつながりませんが、少子化の進行速度を抑えることは可能なのです。
急激な少子化の進行は社会に深刻なダメージを与えますが、その進行を緩やかなものに抑えられるなら、社会を少子化に対応したものに作り替える猶予が得られます。
「少子化を解消する」という過大な期待を寄せなければ、出産や養育の支援は十分効果的な少子化対策と言えるのです。