「少子化はどうしたら解決できますか?」⑤
こんにちは講師のたかえもんです。
前回まで少子化とその対策が上手くいっていないということについてお伝えしてきました。今回は今までの少子化に関する話をまとめます。
少子化は日本だけの現象ではなく、世界中で進行している現象です。その根本原因は「都市化」です。そして、「都市化」に伴う「女性の地位向上」が少子化を加速させています。
都市部では、子供の存在は経済的には負担でしかありません。そのため、多くの人は子供をたくさん持とうと考えなくなくなります。そうした構造が生まれる「都市」が増えていること、これが少子化の根本原因です。
少子化が進行すると、現在の社会システムが崩壊します。そのため、少子化を食い止めようと世界中の国々が対策を講じてきました。
少子化対策は大きく分けて2つあります。「政府による出生率向上のための政策の実施」と「移民の受け入れ」です。
しかし、どちらも完璧な対策ではありません。
「政府による出生率向上のための政策の実施」は、子育て支援や 出産の支援金の配布、育児休暇の休業補償など、出産や育児に関係する負担を軽くさせる制度を作ることです。当然ながら、多額の費用が必要です。
「政府による出生率向上のための政策の実施」は、低下した出生率を一時的に向上させ、出生率の低下を緩やかなものにさせます。しかしながら、出生率が低下することを止めることはできません。出生率の急落を防ぐことができますが、少子化という現象そのものを解決できていません。
もう1つの少子化対策である「移民の受け入れ」ですが、これはすぐに効果があります。ですが、少子化の根本的な原因が「都市化」にある以上、都市に移り住んできた移民の出生率もやはり低下します。
また、移民の母国の多くは発展途上国です。現在、発展途上国でも都市化が進み、少子化が進行しています。
例えば、現在最も出生率が高い国はアフリカのニジェールという国です。出生率は2022年のデータでは6.75でした。日本の2023年の出生率は1.20でしたから、日本に比べてとても出生率が高い国です。しかし、2000年ちょうどのニジェールの出生率は7.73でした。この22年で約1.00も出生率が低下しています。発展途上国でも着実に少子化が起きています。ちなみに、ニジェールという国は、現在最も貧しい国の1つとして知られています。
移民の大元の国々でも少子化が起きているいる以上、世界全体の人口が減少する日はやってきます。そうなると、移民に頼ることが意味をなさなくなります。つまり、移民に頼った少子化対策は今は効果があっても、長い目で見ると破綻する可能性が高いのです。
「政府による出生率向上のための政策の実施」も、「移民の受け入れ」も少子化を根本的に解決する対策ではありません。では他にどんな対策があるのでしょうか?
ありません。
倫理的に許されない対策ならいくつかありますが、当然許されて良いはずがありません。そうなると、少子化を根本的に解決する対策は見つかりません。
もしかしたら、出産をすることで10億円が支給されるような、出産することで経済的にきわめて豊かになれる制度ができたら、少子化は解決されるのかもしれません。ですが、そのような制度は莫大な財源を必要とします。とても現実的とは言えません。
とすると、現在行われている「政府による出生率向上のための政策の実施」と「移民の受け入れ」を継続しながら、何かしらの解決策が発見されるまで問題を先送りするしかありません。
あまり愉快な気持ちになりませんが、以上が「少子化はどうしたら解決できますか?」という質問への回答です。
世界的な少子化についてもっと詳しく知りたいという人には、以下の2冊がおすすめです。
・『2050年世界人口大減少』、文藝春秋社、2020年。
・『人口は未来を語る 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』、NHK出版、2024年。
少子化問題に穏やかな解決法のあることを望みます。