「少子化はどうしたら解決できますか?」④
こんにちは講師のたかえもんです。
前回まで、世界的に少子化が進行しており、その原因は「都市化」と「女性の地位向上」にあるという話をしてきました。
では、少子化の解消方法は本当に存在しないのでしょうか?
残念ながら、倫理的に許される少子化の解消方法は見つかっていません。
少子化が進行している多くの国では、子育て支援や、出産の支援金の配布、育児休暇の休業補償など、様々な少子化対策の政策を実施してきました。
ですが結論を先に言うと、こうした少子化対策の政策は、出生率を一時的に押し上げるだけで根本的な問題解決にはつながりません。
たとえばスウェーデンでは、1900年には4.0だった出生率が1935年には1.7にまで急落しました。この事態に危機感を抱いたスウェーデン政府は、妊婦の医療費を無料にしたり、手厚い家族手当を導入したりと改革を進めました。その結果、スウェーデンの出生率は2.5まで回復しました。
しかし、出生率はそれ以上は回復せず、スウェーデン政府さらに出生率を回復させる政策を追加しますが、ずるずると出生率は低下し続けます。
2023年のスウェーデンの合計特殊出生率は、1.45です。
またスウェーデン以外にも、ハンガリーも参考になる国です。
ハンガリーの出生率は、2010年には1.23でした。それからハンガリー政府は国内総生産(GDP)の約6%もの額を少子化対策に支出します。それが功を奏し、2021年には1.61にまで上昇します。
ですが、そこから徐々に低下し始め、2024年のハンガリーの合計特殊出生率は1.5を下回るという予測が出されています。
スウェーデンやハンガリーの例を見てみると、少子化対策の政策は次のように評価できます。
①政府による出生率向上のための多額の支援は、一時的に出生率を回復させる可能性がある。
②しかし、それは一時的な回復でしかない。
③最終的には合計特殊出生率は減少に転ずる。
④しかも、人口を維持する最低限の2.07という数字を下回る。
つまり、「政府による出生率を向上させる政策は一時的な効果しかないが、出生率の低下を緩やかにする効果はある。しかし、少子化を根本から解消することはできない。」と言えます。
さて、政府による少子化対策が少子化の解決策にならないのであれば、他にどんな方策があるのでしょうか?
少子化対策として一番世界中で採用されている方策は、移民の受け入れです。外から足りない人口を補えばよい、つまりは輸血に近い考えです。
これは即効性もあり、かなり有力な方策です。欧米も日本に負けないくらい少子化が進行していますが、移民を大々的に受け入れることでなんとかしています。
しかし、移民の受け入れもまた、少子化を解消する魔法ではありません。なぜなら、次の2点の問題を抱えているからです。
1つは移民の出身国ですら少子化が起きていること、もう1つは移民も先進国に移住すると出生率が急落すること、この2点です。
移民の多くは、出生率が非常に高い国が母国です。ですが、その母国もまた都市化が進行し、出生率ががんがん減少しています。今はまだ出生率が高い状態ですが、長期的にみると、どこの国でも人口が減少します。
また、移民の多くはとても高い出生率を誇りますが、移民が移り住んだ国では移民1世や移民2世の出生率がかなり低下します。経済的に余裕がないからです。
以上、移民は少子化によって引き起こされる人口減少に即効性がありますが、結局のところ一時しのぎでしかありません。根本的な解決がされない限り、最終的には少子化の波に飲み込まれてしまいます。