「少子化はどうしたら解決できますか?」③
こんにちは講師のたかえもんです。
前回までは、少子化の原因は主に「都市化」にあるというお話をしました。
都市部の出生率は農村部よりも低いです。その理由は、子供は都市部では経済的にはマイナスな存在だからです。
さて、「都市化」の進展とともに「女性の地位向上」が始まります。これはどういうことなのでしょうか?
農村部での仕事である農業は、近くに住む住民や家族と協力して行われます。
機械化が進むよりも前の時代、土地の耕作や収穫といった農作業には多くの人の力が必要でした。
そのため、農村部に暮らす人々にとって協力し合うすることは必須であり、友好で濃い人間関係を築く必要がありました。
農村部では職業を選ぶ余地はなく、家族や近隣の共同体で定められた役割を果たすことが求められます。生きていくために欠かせない食料生産という労働では、このような仕組みが最も効率の良いものだからです。
こうした仕組みは役割の押し付けでもあり、自由の制限だったりもします。望まない生き方を押し付けられてしまうという言い方もできます。
現在よりも技術や知識のない時代、それは生きるために仕方のないことでした。自由を許せば生きていくのが困難な時代だったのです。
ですが、産業革命以降の技術の発達により、そうした状況は変化していきます。機械を使うことで物が大量に作られるようになると、工場労働者が多く求められるようになります。
都市部では新たに大量の人手が求められるようになり、その結果、人口が多い農村部から都市部へと人が流れるようになります。
農村部の農作業は力仕事が多いです。そのため、女性よりも筋肉が多い男性が幅をきかせやすいです。
ところが、機械による生産では女性でも男性と変わらない生産が可能となります。これにより女性の自由を制限していた縛りが1つ緩みます。筋力の強い男性に頼らなくても女性が生きていける環境が生まれたのです。
また、産業革命による都市化の進展で地縁や血縁といったものが薄れます。地縁や血縁というものはいざという時のセーフティである反面、同調圧力やしがらみを生みます。
都市部では人間関係が農村部よりもドライである一方、農村部よりも自由に生きることが許されます。
農村部では職業選択の自由というものは無いに等しかったのですが、都市部では様々な職業を選ぶ自由が生まれました。農村部では生き方をほとんど選べなかったのに対し、都市部ではある程度望んだ生き方ができるようになったのです。
知識の解放も都市部で進みます。
産業革命で、労働者には機械を動かすマニュアルを読み、理解する能力が求められるようになります。
産業の変化により、それまでは一部の上流階級の独占物であった文字の読み書きが一般人にも開放されます。その結果、様々な知識が一般時にも解放され、女性も男性と変わらない知識を身に付けるようになります。
都市部では生きていくための環境や知識が男性と同じようになります。男性が女性よりも優位であるとされる根拠や前提が崩され、女性の地位向上が始まります。
女性の地位向上とは、簡単に言えば女性も自由に生きることができるということです。どのような職業に就くかを選べるようになり、結婚するかしないか、子供を産むかどうかも自分で決めてよいとなることです。これは大変にすばらしいことです。
ですが話を出生率に限定しますと、このことは少子化を加速させます。女性の自由が制限されていた時代では、女性は子供を産むことがほぼ強制されていました。しかし、女性の地位が向上し自由になると、子供を産むかどうかも自由ということになります。絶対に産まないといけなかったものが、そうではなくなるのです。出生率が下がるのは自然な流れです。
出生率の低下は「都市化」が原因ですが、それを加速させるのは「女性の地位向上」です。出生率が低下しているのは、女性の地位が向上してきていることを表しているのです。