私の読書遍歴⑤〜大学時代〜

高校卒業後は一浪の末、早稲田大学第一文学部に入学しました。浪人中も筒井康隆やかんべむさしなど日本SFの当時若手と言われた作家の作品やユングなどの心理学関係、ラテンアメリカ文学関係の本を読みまくっていました(もちろん、昼間に勉強した後のご褒美として)。

筒井康隆氏とはよほど縁があるらしく、大学の生協で筒井氏の本を物色していた時に、櫻井と言う生涯の友が出来ました。文庫本コーナーで筒井康隆の本をいろいろ見ていたら、彼に「筒井好きなの?」とナンパされたのがきっかけです(笑)

すぐに仲良くなり、筒井康隆の話をしまくり、同じく日本SFの長老だった星新一の話もしまくりました。まあ、文学部と言うこともあり、SFだけでなく古今東西の小説について語り合いました。一緒にビリヤードやったり、授業をサボって喫茶店で深いようなくだらないような話をずーっと喋ったり笑ったりしてましたねー。

岩波新書から出ていた、仏文学者で評論家の桑原武夫氏の名著「文学入門」は素晴らしい本でした。「なぜ文学は人生に必要なのか」や「すぐれた文学とはどういうものか」という根本的な問いに、平易な言葉で答えてくれる、文学好きには必ず読んでもらいたい名著です。

感銘を受けた私と櫻井は、この本の巻末に載っている「世界近代小説五十選」というリストに載っている本を片っ端から読んでいこう、ということになりました。

で、早速リストの1番に載っていたボッカチオ「デカメロン」を二人とも購入しました。

世界史の教科書で題名だけは知っていましたが、中身のほとんどがエロ話だったので、びっくりしました(笑)ペストが流行していた時代に郊外の邸宅に集まった男女が10日間かけて物語を話すのですが、そのほとんどが、馬鹿馬鹿しい話か、下ネタか、あるいは馬鹿馬鹿しい下ネタか、のどれかでした。「文学って、こんなんでいいのか」と思い、より文学が好きになりました(笑)

「文学入門」のリストの2番が、かの有名なセルバンテス「ドン・キホーテ」でした(あの激安店のことじゃありませんよ?念のため)。これも、めちゃくちゃ面白かったです!!ほとんどがギャグの連続です。自分のことを騎士だと思い込んでいるドン・キホーテは、風車を怪物だと思い込んで突っ込んでいったり、やることなすことトンチンカンなのに本人は大真面目、従者のサンチョ・パンサがこれまたやたらとまともな言葉で主人を諭す。基本、この繰り返しです。

物語文学の歴史的な意義とか言う堅苦しい話はさて置き、本当に冗談みたいなエピソードの連続だと言うことを全部読んで初めて知りました。ただ、まあ、話が長い長い。私が買った昔の岩波文庫のバージョンは確か全6冊にもなり、しかも語り口がだらだらと冗長なので、さすがに途中でちょっと飽きてきます。でも、櫻井に負けたくなかったので、全部読み通しました。

櫻井はモダンジャズ研究会というサークルでドラムを叩いていたので音楽にも詳しく、大学を卒業してからも何度も一緒に演奏したりもしました。塾のイベントにも参加してくれ、その時も太鼓を叩いてくれました。悲しいことに、2年前に癌で他界してしまいました。私にとって数少ない友人の一人だったので、「コロナなんか気にせずに、もっと会っておけば良かった」と今さらのように後悔しています。