「親業」というベストセラー本をご存知ですか?

塾長の佐々木です。塾の事務室の本棚にひっそりとしまってあった「親業〜子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方〜」という本を今読んでいます。私が常々参考にしているある教育コンサルタントが推薦していたので、3年以上前にアマゾンでポチったのですが、ほとんど読まずに放置していた本です。

なんかタイトルが気に入らなかったような気がしています。だって「親業」って、なんか大げさですよね?そこでなんとなくほったらかしてしまったのですが。

トマス・ゴードン博士というアメリカ人の方の本なので、「親業」はもちろん翻訳です。原題はParent Effectiveness Training (略してPET)で、「親の効果的な訓練」みたいな意味ですね。

翻訳の方をディスするつもりは毛頭ないのですが、「業」なんて言うと職業的な感じがして、「親って職業なの?」と思って無意識に反発していたのかも知れません。

でも、実際に本書を読んでみるとわかるのですが、カウンセラーのような専門家の技術を上手に使って子どもに接するとうまく、と言うことなので、決して悪いタイトル訳ではない、ということになります。「業」をネガティブな意味に捉えてしまったのは、私のネガティブな思い込みが原因でした。

親としての私自身は、上の娘も下の息子も就職したし、現在親子関係に特に問題はないので、このような本を読むのは「今さら」感もなくもないのですが、職業柄、親子の問題に立ち入ることは多い上、塾生が将来子どもを持った時(すでに何人かいますが)の相談や自分の子どもが子どもを持った時の相談にも役立てるなあ、と思って読み始めたら、めちゃめちゃ良い本でした(まだ3分の1くらいまでしか読んでいませんが、認定してしまいます笑)。

読みながら、「たしかに!」とか「なるほど!」と思ったところは蛍光ペンで線を引き、付箋も張っているのですが、3分の1読み終わった時点ですでに付箋だらけです。

そのうちの一部を引用します。

・親子の対立を解決するのに、これまでと違う方法を親が学べば、家族間の不和やけんかは不可避のものではなく、例外的な出来事となる。 p.4

要するに、思春期の反抗期は当たり前と思われている風潮がありますが、接し方によってはそうとも限らない、ということです。

・人が親になると、おかしな、そして不幸なことが起こる。<中略>…自分も弱点をもったふつうの人であり、感情をもった生身の人間であることを忘れてしまうことがあまりにも多いからだ。p.18

・親は本当の感情を隠すべきではない(また隠すことはできない)p.32

これは私も実践できていたと思います。基本的には明るく楽しくやっていましたが、怒る時はめっちゃ怒ったりしてましたので。

・自分はいまのままで相手に本当に受容されていると感じると、人はそこから動き出す自由を手にし、思いのままに自分の変身・成長をはかり、能力を発揮する方法を考えられるようになる。p.36

この文は特に「たしかに!」と思いました。娘に対しても、息子に対しても、なんやかやと口を出していた時はうまくいかなかったのですが、ある程度あきらめて静観しつつも一緒に遊んだりはしていたら、自らやりたいことを見つけて、いつの間にか海外に出て行きました(笑)

・人と人の間のコミュニケーションがしばしばうまくいかないのは、受け手が送り手のメッセージを誤解し、しかも誤解があることにどちらも気がつかないからである。p.58

これはもはや親子に限らず、コミュニケーションの大原則ですね。大人同士の争いもそうだし、国同士の戦争だって、これが多くの原因になっているのではないでしょうか。深いですねえ。

・ほとんどの父親、母親が、あまりにも多くの子供の問題を自分でかかえ込み、自分で所有する傾向がある。p.67

同じようなことを心理学者のアドラーは「課題の分離」という言葉を使って言っています。

「親には親の課題、子供には子供の課題がある」「親子こそ課題の分離が大切である」ということです。まあ、とは言え実際はなかなか難しいですけどね。

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いわゆる子育て本は昔からあまり好きではありませんでした。「褒め方」とか「声かけ」とか、なんかテクニックに走った薄っぺらいものが多いなあ、という印象があったので。でも、この本は本質を突いているなあ、と感じています。ぜひ、手にとってみてください。

ご希望があれば、この本をベースに子育て勉強会みたいなものを開いてみようかとも思っていますので、興味のある方はご一報ください。よろしくお願いします。