太平洋戦争〜もう一つの世界線⑦

こんにちは講師のたかえもんです。

九州南部へと上陸しようとするオリンピック作戦を迎え撃つために計画された決六号作戦では、特攻(特別攻撃)が重視されました。

特攻(特別攻撃)を行うことで、連合軍(アメリカ軍)の第1次上陸部隊の3割を沈めることができると日本軍上層部は考えていました。

ですが、日本軍上層部が沈めることが可能と考えたのは10割のうちの3割の戦力です。とすると残り7割の戦力には上陸を許してしまうことになります。

上陸を許してしまうこの7割の戦力に対して、日本の陸軍は部隊を大きく2種類に分けて撃破を試みる予定でした。

2種類の部隊とは、「沿岸配備師団」と「機動打撃部隊」です。

「沿岸配備師団」は、特攻(特別攻撃)をまぬがれて上陸した連合軍(アメリカ軍)の前進を阻止し拘束する部隊です。

「機動打撃部隊」は、「沿岸配備師団」によって拘束された敵部隊に急襲をかけ、撃破を狙う部隊です。

①海岸近くに「沿岸配備師団」を配置し、上陸して前進しようとする連合軍(アメリカ軍)を足止めにする。

②足止めにされた連合軍(アメリカ軍)に待機していた「機動打撃部隊」が襲いかかり、大損害を与える。

と、このような方針が立てられていました。

この方針に基づいて根こそぎの動員が行われ、動員率は11.47%に達します。この当時の日本は産業の多くを機械ではなく、人力に頼っていました。動員率11.47%という数字は戦争を支える経済活動が停止寸前になる数字です。

なりふり構わない抗戦態勢を整えていた日本軍ですが、これだけの犠牲を払ってもオリンピック作戦の第1次上陸部隊を撃破できるかどうかというのが軍上層部の認識でした。

また、仮に連合軍の第1次上陸部隊を特攻(特別攻撃)や「機動打撃部隊」などで撃退できたとしても、第2次上陸部隊、第3次上陸部隊と他の部隊が次々と押し寄せてきます。

これらにどう対抗するのか、大変困難な問題です。

決6号作戦の切り札は特攻(特別攻撃)ですが、特攻(特別攻撃)は1度攻撃に出れば2度と帰ってこない、戦力を使い捨てる攻撃です。

つまり連合軍(アメリカ軍)の第1次上陸部隊を迎え撃つだけで、日本軍の戦力は底を突くことになります。

これでは第2次上陸部隊、第3次上陸部隊と第1次上陸部隊の後に来る敵に対抗できません。

この難題をどうすればいいのか。日本軍上層部は解決を諦め、考えることを放棄しました。

とにかくまずは第一次上陸部隊に大打撃を与える、それが成功するかどうかが大切でそれから先のことは成功してから考えるというのが軍の姿勢でした。

実に無責任でいい加減な姿勢ですが、打つ手がないのも確かです。

装備、練度、補給全ての分野で日本軍は連合軍(アメリカ軍)に劣っています。そんな状況では一矢報いるだけが精一杯というものでした。

そういった意味では、軍上層部の判断は戦術的には正しいと言えます。

しかしながら、こんな悲惨な状況に追い込まれるということがそもそも失敗です。

軍や政府上層部の仕事は、こんな状況を作り出さないことです。それがこのように追い詰められるというのは、国家の指導者として失格もいいところです。

決六号作戦での抵抗は、最初こそ善戦できたとしても最終的には粉砕される可能性が高かったと言えます。