語彙力が足りないのは、これのせい?
「うちの子は語彙力が足りないかも」
という不安を感じている親御さんは多いのではないでしょうか?
この状況に呼応するようにして最近
本屋さんでやたらと語彙力関係の書籍を目にします。
こういう本を読むのも悪くはないと思いますが、
言葉というのは本でちょっと知った、という程度ではものになりません。
自分で使うようにならなければ身につかない、
というのが本当のところです。
今回は、語彙力不足の原因とその対策についてお話しします。
語彙力不足の原因の一つとして
「居心地のいい環境」
があると思います。
言い方を変えると、
語彙力が少なくても特に困らない環境にいるから、ということになります。
気心の知れた仲間うちや家族とコミュニケーションをとる時は言葉を選ぶ必要はありません。
もう、ほとんど無意識にしゃべっている。
実際は言葉の使い方が多少間違っていたりしても、それで話が通じてしまいます。
昔懐かし昭和初期のお父さん風に言うと「メシ」「風呂」「酒」みたいな感じです(笑)
このお父さんは「メシ」がなんなのか?「メシ」をどうしたいのか?
何も伝えていません。
「メシ」はもう食った、という意味なのか?
「メシ」って、いいよねえ、という意味なのか?
「メシ」っていう単語をただ唐突に言いたかっただけなのか?
「ツー」と言えば「カー」というフレーズ自体、
若い人は知らないかもしれませんが、この「ツー・カー」という関係も語彙力を奪います。
これらの関係が良くない、と言っているわけではもちろんありません。
言葉がいらない関係は素晴らしい関係です。
ただ、こういう環境だけで暮らしていると語彙は必然的に貧困になります。
だって、「ツー・カー」の中に語彙なんていらないですからね。
このように考えると
子ども達の語彙力が貧困な理由が見えてきます。
家では家族とだけ話す。
学校では気の合う、ごく親しい友人たちだけと話す。
SNSでは、自分と趣味の合う人たちだけと絡む。
ネットでは、自分の興味のあるものだけを見る。
居心地が良すぎるんです(笑)
自分の世界に閉じこもったままでも、十分に暮らしていけてしまうのです。
自分の興味の範囲内の語彙だけで事足りてしまうのです。
で、社会人になってから初めて、それでは通用しないことに気づく。
これは結構、深刻な問題です。
社会人になる前に、なんとかしたいですね。
どうすればいいのか?
それは簡単です。
すでにヒントは出ているので、勘のいい方はお気づきだと思います。
「居心地のいい環境」が語彙力不足の原因なのですから
「居心地のいい環境」から出させてあげればいいのです。
もっと具体的に言えば、
お子さんを「親しくない人や知らない人としゃべらなければならない」状況に置く、ということになります。
一人で買い物をするのもいいですし、ちょっとした一人旅もいいでしょう。
何かの会合や集まりに出席させるのもいいでしょう。
必然的に「誰にでも通じる言葉」で話さなければいけなくなります。
聞き手としても「内輪だけで通じる言葉」とは違う言葉を理解しなければいけなくなります。
この緊張感が語彙力を高めるのです。
語彙力関係の本もここで初めて使う機会が訪れるので、思いっきり役に立つと思います。
また、普段の会話でも、お子さんが「やばい」や「びみょー」など、あいまいな表現ばかりを使うようでしたら、「もうちょっと詳しく!」と説明を求めるのもいいでしょう。
そもそも「やばい」は良い意味でも悪い意味でも使いますよね。
私は生徒が「やばい」と言ったら、「それは良いほうの『やばい』?それとも悪い方の『やばい』?」と聞いたりします。
ちょっと語彙レベルが高めの本を読むのも「居心地の悪い環境」という意味で有効です。
まあ、単純にいろんな大人としゃべる機会の多いお子さんは語彙力ありますよね。
「居心地のいい環境から出る経験」という視点で考えれば、他にもいろんなことができると思います。
やりすぎるとストレス過多になりますから要注意ですが、ほどほどに居心地の悪い経験をさせるのは、脳に良い刺激を与える、という意味でもオススメです。