ロシアのウクライナ問題について⑩
こんにちは講師のたかえもんです。5月9日の対独戦勝記念日でロシアは戦争宣言を出すのではないかと恐れられていましたが、幸いなことにそのような宣言は出されませんでした。
ロシア政府は今回のウクライナ侵攻を「戦争」とは呼ばず、「特別軍事作戦」と定義し続けています。
これは言葉遊びに近いですが、ロシア政府がウクライナ侵攻を正式に「戦争」と定義づけた場合、総動員が行われるのではないかと恐れられていました。
4月までにロシアはウクライナに侵攻した際の兵力の4分の1を失ったとされていて、それを打開するために総動員をかけ、兵士の数を増やそうとするのではないかと考えられていました。
今回は回避されましたが、仮に総動員がかけられた場合いったいどのくらいロシア軍は増えるのでしょうか?
普通の仕事でもそうですが、ある程度の研修や訓練を受けないと人数がいても役に立ちません。右も左もわからない人が現場にたくさんいて一緒に仕事をしなくてはならないなんて、じつにぞっとする光景です。
徴兵を受けたからと言って、明日からすぐに前線へ投入なんて事態にはなりません。まずは数ヶ月間の訓練がまっています。そのため、一般人の徴兵は最後の段階でなされ、普通は予備役の招集から始まります。
予備役とは軍務を任期終了した人々のことを基本的には指します。そういった人々は軍務の第一線から退きはしましたが、軍務の経験者ということで全くの素人よりはスムーズに訓練を完了させられます。そのためいざという時に呼び出されて戦場に向かわされます。
軍隊というのは経済的には究極の無駄飯喰らいのお荷物です。何ら生産的な活動もせず、ひたすら国家予算を食い潰す存在です。ソ連は軍隊を限界以上まで膨らませてしまったため崩壊しました。なければそれにこしたことがないのが軍隊です。
軍隊はとにかくお金がかかります。その中でも最もお金がかかるのが人件費、給料です。このあたりは一般的な企業と変わりません。
そのためなるべく軍隊の人数は少ない方が望ましいのですが、非常事態にそれでは足りなくなる場合があります。それに備えてプールしておくのが予備役です。定年後の再雇用のようなものです。
ロシアでは過去5年間に軍務を終えた人は200万人であると言われています。
普通に考えるとこの200万人が新たにロシア軍に参加するのではないかと考えてしまいますが、そうはいきません。
ロシア軍は各地に「物資装備修理保管基地」というものを設置しています。これが新たに予備役の人々を受け入れ、訓練させられる施設です。
この「物資装備修理保管基地」の許容人数は合計で6万人ほどと考えられ、今ロシア軍が即座に増やせる人数はこの6万ほどであると考えられます。
この6万人以上となると、訓練にかかる時間がさらに必要となりすぐには戦場に出せません。
ロシア軍は侵攻当時に存在していた部隊のほぼすべてをウクライナに投入しているので、予備はこの6万人ほどであると言えます。つまりあと6万人でロシア軍の戦力は尽きることになります。
もしそうなってもロシア政府が停戦をしない場合、一般人が訓練の足りていない状態で戦場に行かされるようになります。訓練の足りていない兵士の死傷率は高く、一般のロシアの人々が無意味に死ぬことになります。
政府の仕事は国民の安全を保障することが最大の仕事です。ロシア政府はこの仕事を果たしていると言えるのでしょうか。とてもそうは思えません。
安全保障についてロシアは根本的に考え直すべきです。