ロシアのウクライナ問題について⑤

こんにちは講師のたかえもんです。スターリンによるホロドモールで少なくとも300万人のウクライナの人間が餓死しました。こうした仕打ちを受けたため、ナチスドイツがソ連に侵攻した時にはウクライナの人間の多くがナチスの侵攻を歓迎しました。スターリンの圧政から解放されると思ったからです。

しかし待っていたのはスターリン以上の仕打ちでした。

ナチスドイツはゲルマン系の人間を優秀な血統を持つ人種と特別視し、それ以外の人種を劣等民族と見下す異様な国家でした。

ゲルマン系の人間とは白い肌、金髪、青い眼といったステレオタイプな「白人」のことだと思ってください。ナチスはこうした人間こそが世界で1番優秀な存在だと定義し、ユダヤ人やスラブ人、黄色人種や黒人は奴隷として支配されるべきだと考えていました。

ウクライナ人やロシア人はスラブ人という民族に分類されます。そのためナチスドイツにとってウクライナ人は対等な存在ではなく、排除するべき異物でした。

ナチスはウクライナの豊かな大地が欲しかっただけで、そこに住む人々は要りません。

余計なウクライナの人間を始末し、ドイツ人の農家に空いた土地を与えるということを本気で考えていました。

そのため、ウクライナ中で虐殺が始まります。長引く戦争のうっぷん晴らしもあり、面白半分の虐殺も多く行われました。

スターリンによる人工飢餓で多くのウクライナの人間が餓死しましたが、それでもスターリンはウクライナ人を皆殺しにすることまでは考えていませんでした。しかしナチスはスラブ人の絶滅を目標に掲げています。

こうした状況に追い込まれたウクライナ人は地獄の二択を迫られます。ナチスに従って虐殺されるか、300万人以上を餓死させたソ連に味方するかという二択です。

多くのウクライナの人間はソ連に味方することを選びます。まだソ連につく方が生き残れる可能性が高かったのと、自分勝手な差別意識で故郷を蹂躙するナチスへの憎しみに火がついたためです。

悪の帝国 対 悪の帝国の戦いと言えるナチスとソ連の戦争はソ連の勝利で幕を閉じます。

ソ連の軍人1470万人、民間人1000万人。ナチスドイツの軍人440万人、民間人150万人。これがソ連とナチスドイツの死者です。(ナチスドイツの死者は西部戦線も含みます)

戦争はソ連の勝利でしたが、ウクライナでは苦難が続きます。

ナチスが攻めてきた時に、ソ連に反旗を翻す人々もいました。ホロドモールを起こしたスターリンが許せなかったためです。

ナチスとの戦争に勝利したスターリンはこれらの人間の排除を決定します。戦争が終結してから5年間もスターリンは、ウクライナの反ソ連組織の壊滅に力を尽くします。

ウクライナは第二次世界大戦の始まる前にはソ連からホロドモール、第二次世界大戦中にはナチスドイツからの絶滅政策、第二次世界大戦後にはスターリンからの裏切り者の処罰という悲惨極まりない経験をします。

スターリンが病死した後はそれまでよりはひどい扱いを受けなくなりましたが、ウクライナでは作った農作物のかなりの量を供出させられたり、威嚇のための軍事演習が行われたりしました。

また人口の減ったウクライナの東部に、ロシア人を移住させるなど「ロシア化」が積極的に行われました。

こうした過酷な体験がロシアへの根深い反感となって現在に続いています。

さてウクライナのロシアに対する悪感情についてこれまでお伝えしてきました。ところが実際はそう単純にウクライナはロシアを恨んでいたという訳ではないという複雑な事情について、次回はお伝えしていきます。