「うちの子は読解力がなくて」とお嘆きのお母様お父様へ
読解力をつけるには、読書が一番手っ取り早いです。なので、まずは本を読むことが好きになることが第一歩だと思います。
そして、本を読むことが好きになるには、まず「本って面白いな」と心から感じてもらう必要があります。
興味のない本を無理やり読ませようとしても、うまくいかないどころか逆効果で、ますます読むのが嫌いになってしまいます。
昨日、ササキ塾鴨宮教室で、教科の枠を超えた新設講座「面白読書」の第1回体験授業を行いました。
今回の授業では、フランツ・カフカの「変身」を扱いました。ある朝、目が覚めたら主人公が巨大な毒虫になっていた、という世界的に有名な小説です。
冒頭の数ページを塾長が朗読しました。生徒たちは、しーんとして聞いていました。
「人が物や動物、あるいは異性になってしまうお話を「変身譚(へんしんたん)」って言うんだよー」と言って、具体的な作品名を挙げたあと、「想像力を駆使して君達も変身譚(へんしんたん)を書いてみよう!」ということで、次のようなプリントを配りました。
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カフカ「変身」の冒頭
ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変わってしまっているのに気づいた。彼は甲殻のように固い背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、何本もの弓形のすじにわかれてこんもりと盛り上がっている自分の茶色の腹が見えた。腹の盛り上がりの上には、かけぶとんがすっかりずり落ちそうになって、まだやっともちこたえていた。ふだんの大きさに比べると情けないくらいかぼそいたくさんの足が自分の眼の前にしょんぼりと光っていた。
「おれはどうしたのだろう?」と、彼は思った。夢ではなかった。
*キミも変身譚を考えてみよう!
ある朝、( )が気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で ( )に変わってしまっているのに気づいた。彼(彼女)は…
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要するに、カフカ「変身」の冒頭を真似して、自分で物語を書いてみよう、というわけです。こういうのが苦手な人は( )の中だけ埋めればOK、ということにしました。「最初のカッコは自分の名前でもいいし、誰か他の人でもいいよ。あ、ただここにいる生徒の名前書くとイジメになると困るから、ダメね」と言ったら、「じゃ、塾長にしよう」という中1の生徒がいました(笑)もちろん、OKです。
内心、「ちょっと最初からハードル高かったかな」と思ったのですが、どうしてどうして、なかなかの力作が揃い、爆笑してしまいました。自分が消しゴムになった話もあれば、塾長(つまり私)が犬になった話、女性講師(私の娘)がイチゴになった話など、傑作揃いです。
時間が来てしまったので、続きは家で書いてくる、ということになりました。
以下は、参加した生徒が書いてくれた、今回の授業の感想の一部です。
・自分なりの物語をつくれたりして楽しかった。ちょっとおもしろいことができた。みんなのもおもしろかった。今度もやりたい。
・小さい時に自分で絵を書いてお話を考えることはあったけど、自分が変身するなどのお話を考えたことがなかったのでとても楽しかったです。
・今回のことをして、変身譚を書いてみて、物語をかくのが難しかったけど、意外とうまくかけたかなって思った。
今回の授業で嬉しい誤算だったのは、生徒たちの想像力と発想の豊かさです。英語や数学という通常の教科ではなかなか垣間見ることができない要素なので、私自身がとても学びになりました。
来週はさらに面白くなりそうな予感がします。